彼氏彼女の事情(著:津田雅美)
マンガParkというアプリで見続けている作品。
本当にいい作品だった。
原作漫画の後半は映像化してなかったから、見たことなかった。
アニメは漫画の序盤だからまだ明るく笑える雰囲気だけど、
漫画の後半から急に深刻になり、笑える雰囲気がない。
後半では有馬総一郎という出木杉くんみたいな完璧な男の子が、
ずっと抑圧というのか、忘却していたけど、実は幼い頃、
いじめられたり虐待されていたことを少しずつ思い出しはじめて、
トラウマや嫌な記憶から精神的に余裕がなくなってきたけど、
自分のみじめな姿を見せたくない一心で、
ひたすらに平気なふりをして、周りに隠し続けた。
隠していたことがばれても、
「自分でなんとか処理するから、放っておいて」と、
平気なふりをして、ひたすら一人になろうとする。
有馬は過去の被害者としての自分から脱却して、ひたすら努力して、
優秀で他人に勝って上に立てる、
他人から羨ましがられる自分でありたい、という一心で生きていた。
自分の秘密がばれるとなると、
必死に築き上げてきた自己概念やマスクも全部、
嘘だったのがばれる。
ずっと悲惨さを抱えていたのがばれてしまうのだけは、
なんとか避けて、隠そうとしていた。
雪野に嘘がばれて、隠しきれなくなったとき、
有馬は、「俺みたいなどうしようもない男に好きになられて、
無理矢理感情をぶつけられて、雪野はかわいそうだよな」と、
自分を嘲っていた。
自分は迷惑かける存在だから、もう付き合いたくない。
という感じで、離れようとする有馬に、雪野は、
「こういう時に一緒にいなくてどうするの?
怒りをぶつけたのを気にしてるのかもしれないけど、
気にしてないから」と、離れようとしなかった。
有馬は母親との関係もあってか、根本的に、他人が信頼できない。
自分は有馬ほど極端な環境で育ったわけではないにしても、
有馬のことを、全く他人とは思えなかった。
そういえば漫画アプリのコメント欄で、
有馬を虐待して育児放棄した母親に対して、
強い怒りを表現したコメントがあった。
不思議なもので、
インクで描かれたそれほどリアルでないキャラクターでも、
憎いキャラクターはたしかに憎く感じられる。
漫画アプリでは、コメント欄に悪役への怒りや憎しみや、
被害者への同情が溢れる、
ということが時々あるけど、デイビッドたちの映画リトリートみたいに、
読んでいるとつい感情移入してしまう。