やっぱり大好き名作アニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』第5話
ハルヒのコース的なところを見たい人は、
たぶん5話(憂鬱V)から見るのがいいかもしれない。
コースとかマトリックスとそっくりの世界観の説明があるから。
気が強くて優秀で見た目も美しく、自信があり、
決して弱音を吐かない性格のハルヒが、
自分の無価値感、人生への絶望感を吐露するシーン。
「子どもの頃、自分は特別で価値があると思っていて、毎日楽しかった。
でも、初めて野球場に行ったとき、何万人も人がいて、
人口の多さに驚き、
自分が1億人もいる日本人のうちのひとりに過ぎない、
ちっぽけで無力で、さして特別でもない、
あまり価値がない存在でしかないことをはじめて意識して、
愕然とした。それから、毎日が色あせ、日常がその他大勢と変わらない、
退屈なルーティンの繰り返しにしか思えなくなり、
楽しくなくなった。
何もせず、待っていても、退屈で平凡な時間がただ過ぎるばかり。
だったら、自分からアクションを起こして、ただ待っているだけの、
無力な女じゃないことを証明して見せると思い、いろいろやったけど、
結局変化は起きなかった。何か変化を期待していたけど、
何も起きないまま、気づいたら、高校生になっちゃった。」
久しぶりにハルヒを少し見直したら、5話はやはり良かった。
ハルヒの無価値感、自分はさして特別でもない、
無力でちっぽけな存在だから、
なんとか特別になりたい、自分を価値ある存在にしたかった、
という気持ちは、共感できる。
小学生が野球の練習をするのも、大人が仕事での成功を強迫的に追求するのも、「無力で、平凡な、無価値な、その他大勢の人間でいたくないから、なんとか自分の価値を上げて、自分の価値を証明したいから」
じゃないか。
ハルヒが自分の人生への絶望感を話したあと、
主人公は助けになるようなことは何も言えず、
無力感を感じる。
その後別のキャラクターが、「ハルヒは、自分は無力でちっぽけな女の子、
だと思って、不満や強烈な怒り、莫大な攻撃衝動を抑圧している。
本当は、ハルヒの心の力、願望の力は宇宙で最も強い力なのに。
自分で自分を、思い込みの世界観に幽閉して、世界に不満を抱いている。」
という説明をする。
その後、ハルヒの莫大な怒りと攻撃衝動で作られた世界が、
一瞬で崩壊する様を、主人公は目撃する。
自分の願望で作られた世界の中で、
無力で無価値な被害者である人間になりきって、
無力な被害者の世界観に自分を幽閉して、
本当の自分をすっかり忘れて人間として生きている。
そのことにまるで気づかず、退屈な人生に絶望している。
しかも、見た目が美しく魅力的で優秀だから、
本当は絶望しているのに、
傍目には恵まれているように見えるという、カモフラージュまである。
5話は、本当に完璧な流れだった。見事。
他のエピソードでは、同じ日を何万回も繰り返して、
ループから脱出するとか、いろいろぶっ飛んだ話があり、
楽しいアニメです。
オタクの代名詞みたいなアニメだけど、
マトリックスやインセプション、トゥルーマンショーと同じくらい、
個人と世界の関係をうまく描いていて、おススメです。