アニメの世界の大規模な罪悪感と憎悪
のりこさんが、私たちはスクリーン上の状況に存在論的罪悪感を
移し替えたくて自分や他人を責めている。
結局突き当たるのは、「自分さえいなければ良かったのに」
という自己憎悪で、それは、
人間が人生で味わう最も強い罪悪感の何億倍だ、というのを聞いて、
いろいろと過去のことを思い出した。
高校の頃、仲が良かった友達と3人で、
世界中のファンが待望していた、
エヴァの新劇場版3作目のQを観に行った。
1作目と2作目は、テレビ版とあまり変わらない順調に進むストーリーで、
3作目の予告では、一気に新しいストーリーに突入する雰囲気だったので、一体どんな展開になるのか、ネットですら誰にも予想がつかず、
完全な未知への期待と不安があった。
映画が始まると、2作目からいきなり14年経った世界で、
主人公が長い眠りから目を覚ますと、死刑囚みたいに拘束されていて、
世界がほとんど滅亡していて人口はほんのわずかしかおらず、
主人公はわけもわからないまま、世界の滅亡の責任を取らされる。
前までは仲間だったキャラクターから、
急に非難され、蔑まれ、咎められ、憎まれて、まさに、
「こいつさえいなければよかったのに」という不当な扱いを受けている。
2作目では、気の弱い主人公がだんだん成長して、
人間関係も良くなってきていたのに、急に3作目で、
主人公が世界中の何十億の人間を殺した凶悪犯罪者みたいな扱いを受けているという、
あまりの理不尽な扱い、どんな作品でも未だかつて見たことがない、
大きなスケールの落差、前作のように面白くも楽しくもない、
ひたすら深刻で重たい世界観に、
自分も友達もまったく理解が追いつかず、
その後の展開も含めて、
「映画で何が起こっているのかさっぱりわからん。理解不能」
という感じで、映画館を出ても、3人とも、
そもそも何を見たのかぜんぜん理解できないから、
何も感想を言い合うことも出来なかった。
見たことある限り、最も大規模で、あまりにも深刻な罪悪感。
数年後、監督の庵野さん本人が公式に、重い鬱を告白する文書を発表したり、
庵野さんの奥さんや周囲の人や、
宮崎駿までもが重い鬱に苦しむ庵野さんを気遣ったり看病していた様子がアニメ化されてYouTubeで発表されたりして、https://youtu.be/uqeU5a6YgCs
映画3作目を作っていたとき、ひどく重い鬱に苦しみ、
食欲もなくなるほどだったこと、
90年代にエヴァが大ヒットしたときから、超多忙になり、有名人になり、
稀有な才能あるヒット作家として、
周囲やファンからの強い期待やプレッシャー、
嫉妬や憎悪を一身に受けて、責任ある立場になり、
資金や経営のことで会社の仲間と揉めたりして、
アニメ製作に嫌気がさしていたことなどを知って、
庵野監督が味わっていた苦しみや嫌な経験が、
作品に強く現れていたのか、だからあんなに絶望感しかない世界観だったのかと、やっとはじめて納得した。
高校の頃、絵を描く楽しさを知って、そういう業界に憧れていたけど、
いざフタを開けたら、そこにいる人たちは、ひどく苦しみながら
生きているというのを知って、愕然とした。
でも、プロフェッショナルの流儀で、
「あの人は苦しんでるけど、結局は本人が望んでやってんじゃん、
とも思ってます」と言っていた。